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V章と全体におよぶ広汎な改正である。以下にこの改正内容の概略を述べることにする。
2. SOLAS条約改正の内容
(1)船内への浸水防止対策
RO/R0客船は船首に車両昇降用の扉を持っている場合が多いが、エストニア号事故でも見られるようにここは大きな波の力を受けやすい場所でもある。その構造強度については船級協会(IACS)の方で基準の見直しが進められているのでそちらに委ねることになった。ただしSOLAS条約では設計面で、船首扉が壊れた時に、その後ろに配置される第二次防御壁とでもいうべき内部扉が壊されることが無いよう要求することにした。これはエストニア号の事故原因の一つとされている点に対する配慮でもある。
次に船体扉は可動式であるので、操作ミスの可能性は常に存在する。そのミスが大事故に結びつかないよう、閉鎖されているかどうかがわかる監視装置あるいはTVモニター装置を扉の近くに備えることを義務づけることになった。

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図1 船首扉、衝突隔壁及び内部扉の関係

(2) 復原性
復原性については、エストニア号もヘラルド・オブ・フリー・エンタープライズ号も車両甲板への浸水が見られたことから、遭遇する波浪と甲板上滞留水の可能性とそれに耐える復原性能余裕の関係が最大の争点となった。SOLAS条約においては、復原性は標準的な損傷浸水状態を用いて評価されることになっている。これは衝突事故を想定したものであるが、上の二つの事故はこれとは別なシナリオ、すなわち船首扉の閉め忘れあるいは波による船首扉破損による浸水によるものである。しかし復原性能を評価するにはこの標準的

 

 

 

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